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ベネズエラの旅 -カラカスで拉致される-

ベネズエラで拉致される!

カラカスの長距離バスターミナルに行きたい

エンジェルフォールに行くため、まずはカラカスから夜行バスでシウダーボリーバルまで行こうと考えました。

夜8時頃にボリーバル広場辺りにいた私は、危険な町をなるべく歩かないため、タクシーに乗ることにしました。

 

タクシー運転手とのトラブル

事前に料金の交渉をして、カラカスの長距離バスターミナルへ。

タクシー運転手は、途中携帯電話で誰かと話していました。

窓を開けて走っているので、町の騒音が大きく、電話の会話は聞こえてきません。

さて、目的地に着きました。

料金を支払おうと紙幣を渡すと、運転手は「こんなに移動したのに、この料金のわけがないだろう。全然足りない!」と怒り始め、事前に交渉した料金の3倍を要求してきました。

日常会話程度のスペイン語が理解できる私は、事前に決めた金額を聞き間違えたとは思えませんでした。

そのため、その法外な要求を拒否しました。

すると、運転手はタクシーを急発進させて、「わかった。それなら、警察に行くぞ。警察で解決してもらおう」と興奮気味に話します。

しばらくすると、警察署に着きました。

 

警察官の奇怪な行動

タクシー運転手は、警察署前に立っている40代くらいの警察官に話し始めました。

私は、「スペイン語の会話能力から考えると、警察官に事情を説明する上で、自分のほうが圧倒的に不利になってしまう。ここで面倒なことになるよりは、要求された通りのお金を払うほうが賢明かもしれない。今夜長距離バスに乗れなくなっても困る」と思いました。

そこで、「分かりました。お金を払います」と言って、高い金額でしたが支払いました。

 

お金を受け取った運転手はタクシーを走らせ、去って行きました。

そして、私が徒歩でバスターミナルまで行こうとした時です。

さっきから警察署前で私と運転手とのやり取りを見ていた2人の若い警察官が、声を掛けてきました。

「パスポートを見せなさい」

すでに解決したのに、何なのだろう……と思いました。

しかも、警察官とはいえ、さっきまで傍観していただけなのに。

 

警察官の要求に拒否できない弱い立場

警察官を相手にパスポートの提示を拒否するわけにもいきませんでした。

バックパックからパスポートを取り出し、見せました。

すると、その警察官1人が「バスターミナルまで送るから、バイクの後ろに乗りなさい」と言いました。

日本の白バイとは違います。

カラカス警察のバイクは、モトクロスバイクです。

抵抗がありました。

バイクの後ろに乗せて、警察がどこかまで送ってくれることなどあるのだろうかと思っていましたので。

また、バスターミナルまではそれほど遠くありません。

しかし、ここは危険な都市カラカス。

さらに、すでに夜も更けていました。

 

警察官は良い人であると信じるしかない

この警察官たちは危険から守るために、私を送ってくれるのかもしれないと考え、乗ろうとしました。

でも、何よりも乗ろうと考えざるを得なかったのは、警察官が私のパスポートをまだ返してくれていなかったことです。

不自然さを感じつつも、私はモトクロスバイクの後ろに乗りました。

すると、若い警察官のもう一人もモトクロスバイクの後ろに乗りました。

1台のバイクに3人乗っています。

私は前後の警察官に挟まれて乗っている状態です。

 

暗い所へ連れて行かれる

走り出した途端、新たな危険を察知しました。

左に向かうはずのバイクは、右に走り始めたのです。

バイクは夜のカラカスの公道を走って行きます。

もう降りることはできません。

しばらくして、バイクは道路脇の暗い場所に停まりました。

一人の警察官が「財布のお金を確認する。財布を出せ」と要求してきました。

もう一人の警察官は、私のバックパックに手を突っ込んで、物色しています。

 

警察官には従うしかない

この警察官たちは、悪人であるとさすがに確信していました。

なんとか撃退できないかと考えました。

でも、それは無理だと判断しました。

その理由がこちらです。

①警察官は拳銃を持っているため、こちらが抵抗すれば、射殺される恐れがあります。

警察署前で堂々と拉致するくらいなので、殺害することをためらわないかもしれません。

②こちらが抵抗すれば、警察官として公務執行妨害などの理由で私を逮捕できます。

 

このような理由から、私は、目の前で金品を奪おうとする二人の男に手が出せませんでした。

警察官が悪人であることは、実にたちが悪いですね。

お財布から日本円、ドル、ベネズエラのボリーバルフエルテ紙幣を抜き取った警察官の二人はバイクに乗り込みました。

そして、去り際にパスポートを投げ捨て、走り去って行きました。

私は、暗闇の中に取り残されました。

 

泣き寝入りはご免!

盗まれた現金は合計すると、日本円にして8万円分。

幸い、現金の多くはバックパックの中に隠してあったので、その被害額で済みました。

でも、ベネズエラの若い警察官にとって、8万円はかなりの大金です。

もちろん、私にとっても大金です。

パスポートとバックパックを拾い上げた私は、今来た公道脇を逆走し、30分以上走って警察署に戻ってきました。

 

警察署での訴え

警察署内の屋外駐車場で見つけた警察官に「ここの警察官にお金を奪われました」と伝えました。

すると、10人ほどの警察官が集まってきました。

さらに1時間ほどすると、英語が話せる警察官が1人来ました。

「すべての警察官がこのあと戻ってくるので、その警察官の中で誰が犯人か教えてください」と言われました。

とても親切そうな人でした。

 

犯人を見つける!

夜8時半から始まった犯人探し。

気がつけば、私の回りには50人以上の警察官と、パトカー、バイクが集まっています。

まるで映画のワンシーンです。

全員が集まったのは、午前1時過ぎ。

5時間も掛かりました。

その中で、私は、犯人である若い警察官2人を見つけました。

私は通訳の警察官に「あの2人が犯人です」と伝えました。

そして、その2人の前に近づいて行きました。

警察署に緊張が走ったのを肌で感じました。

目の前まで来ました。

 

無情な結末

通訳の警察官は「この2人が君からお金を奪ったのですか」と聞くので、「はい、この2人です」と答えました。

すると、通訳の人は「それなら、証拠を示して。証拠がなければ、対応できない」と言いました。

先ほどまでとは違い、通訳の人は私に対して厳しい表情を見せ始めました。

私は動揺しながら言いました。

「証拠って……顔を覚えています。この2人の顔でした!」

通訳:「それでは証拠にならない」

私:「この服を着ていましたし、このヘルメットをかぶっていました」

警官の服には、緑系と青系の2種類がありました。

また、ヘルメットをかぶっている人はわずかでした。

通訳は首を横に振りながら「それでは証拠とは言えない。きちんとした証拠を見せてくれ」……。

これ以上の証拠もありませんでした。

また、犯人を特定する気がないのも分かりました。

 

ベネズエラ警察の真の怖さ

あとで知ったのですが、ベネズエラでは、警察官がこのような事件を起こすことがあるそうです。

このような事件は「拉致」、もしくは「短時間誘拐」と言います。

ベネズエラ警察は、このような犯罪を無くしたいのですが、それは困難なことだそうです。

あの時、通訳の警察官は、私の主張を証拠不足として取り合ってくれませんでした。

もし通訳の警察官が私の味方をして、2人の若い警察官を犯人と見なしていたら、その通訳の人はあとで復讐されてしまうのです。

そのため、警察官が警察官を取り締まるのは難しいのだそうです。

拉致される前に横で犯人を見ていた40代くらいの警察官が、まったく援護してくれなかったのも仕方のないことでしょう。

 

タクシー運転手も共犯者!?

タクシー運転手が運転中に携帯電話で誰かと話していましたが、その相手はあの若い警察官かもしれません。

カモが見つかったことの連絡でしょうか。

また、乗車前に決めた料金を大幅につり上げたのは、客である私が納得しないようにするためだったのでしょう。

わずかにつり上げたのなら、客は支払ってしまうかもしれませんから。

納得せず口論する状況にあえて導いて、仕方ないというふりをして警察署に連れて行き、あとは仲間の警察官にお金を強奪させたかったのでしょう。

あとで知ったのですが、ベネズエラでは、犯罪者と警察官がグルになって、旅行者から金品を奪うのは常套手段だそうです。

 

犯人から盗難届をもらう!?

警察が犯人を特定する気がないと分かった私は、海外旅行保険で奪われたお金を補償してもらうことにしました。

海外で盗難に遭った場合、現地の警察署で盗難届を作成する必要があります。

それを持ち帰り、保険金の請求時に提出します。

それにしても、盗難届を作成するために、年配の警察官から事情聴取をされている際は、なんとも妙な気分になりました。

警察官:「どこで最初に犯人と会いましたか?」

私:「この警察署です」

警察官:「……」

警察官:「誰にお金を奪われましたか?」

私:「ここの警察官です」

警察官:「……」

……夜中の2時過ぎに聴取が終わり、翌朝受け取ることになりました。

ちなみに、現金は保険の対象外になっている場合がほとんどです。

私は対象になっている保険に加入していました。

そのため、帰国後に保険がおりて、損失は無くなりました。

 

どこに宿泊するべきか?

すでに夜中の2時を過ぎています。

この警察署を離れ、旅を再開したいところですが、翌朝の盗難届を受け取るため、この辺りで泊まることにしました。

警察官が、「ここに警察官の寮があるから、泊まっていきなさい」と言ってきました。

「犯人のいる警察署に泊まるなんて危険すぎて、お断りです!」と強く断ったものの、警察署の外も世界有数の犯罪都市……。

結局、警察の寮で泊まることしました。

 

ボロボロの警察署の寮

警察署に来て以来ずっと外にいた私は、寮のイメージを勝手に良いほうへと作り上げていました。

しかし、寮の部屋に連れて行かれると、唖然としました。

それは、ぼろぼろの寮で、狭い部屋の中には二段ベッドが並んでいます。

普段そこに寝泊まりしている警察官の生活感が出ている、雑然とした部屋。

しかも、下着1枚の大きな体の警察官たちがあちこちで寝ています。

私のベッドは2段ベッドの上段で、下ではいびきをかきながらおじさん警察官が寝ています。

 

ベネズエラでは蚊に注意

恐ろしかったのは、部屋に蚊が飛んでいたことです。

ベネズエラでは、マラリア、デング熱、ジカ熱、チクングニア熱、そして黄熱病の菌を持った蚊が飛び回っています。

現地の人は「3回刺されたらアウト」と言います。

 

寮のシャワー

寝る前にシャワーを浴びることにしました。

日本を出発してから47時間後の初めてのシャワーです。

シャワーは水しか出ません。

また、シャワー室には扉もカーテンもありません。

誰か来ないかドキドキしながら、午前3時に予期せず場所でシャワーを浴びました。

いろいろなことが起こって、気持ちの整理がつかないまま1日目が終わりました。

 

日本大使館のお世話になる

翌朝、警察署に日本大使館の領事さんが来てくれました。

カラカス警察が連絡をしたそうです。

その後、領事さんと共に別の警察署に行きました。

そこは、警察の内部捜査をしているところです。

カラカス警察の全警察官の写真を見て、誰が犯人かを特定することになりました。

3時間ほどかけて被害届を作成しました。

その後、日本大使館に行き、領事さんたちとお話をしました。

領事さんたちには大変お世話になりました。

 

シウダーボリーバルへ

クレジットカードは無事だったので、ATMでお金をおろし、旅を再会しました。

夜7時半の夜行バスでシウダーボリーバルへ。

二階建てのバスでした。

二階建ての最前列は快適でした。

シウダーボリーバルには翌朝到着しました。

 

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